エッセイ『印画紙』

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 一昨日に続き、受付の手伝いに出かけた。
 この際なので、もう、某所などともったいをつけるのはやめよう。満開の桜美しい横浜は元町公園内、洋館エリスマン亭のギャラリーで開かれた写真展の手伝いである。
 
 趣味を同じくする者が開いたモノクロフィルムによるグループ写真展。そう、このブログに写真を提供してくださっている方が、そのお仲間たちと開いた写真展だ。
 天気にも恵まれ、5日間の写真展は、今日大盛況のうちに最終日を迎えた。
 
 えええええっ??
 どうして、もっと早く言ってくれなかったのぉぉぉぉ???
 知っていたら、出かけたのに~!
 
 と言ってくださる方が、ひょっとしたら、いらっしゃっるかもしれない。
 4ヶ月も前から決まっていた写真展。だが、私は、自分のブログで写真展のお知らせはしない、と決めていた。
  それは、私なりの美学だ。
 
 は?どういう美学よ?という問いが飛んで来そうだが、その問いに答えることは無粋というものだ。

 遠くは九州からも飛行機で訪れた方もいらした写真展。写真を見ることはもちろんだけれど、撮影者と会って、さまざま語り合うことを皆様楽しみにしておられた。
 
 「だから、ひとりひとりお相手していると、受付で案内する人がいなくなっちゃうんだよね。」
 「はいはい。そういうことなら、私が受付をお引き受けします。」

 撮影者それぞれのお身内、ご友人、その他お仲間がお土産片手に訪れる一方で、洋館見学がてら、若いカップルや年配のご夫婦、そして、親子連れが次々と入ってくる。
 大きな写真機をぶら下げた初老の男性が、感心したように写真に見入っているかと思えば、身軽ないでたちの若者が、興味深げに、テーブルに並べられた蛇腹カメラを眺めたりしている。
 
よろしかったら、どうぞお持ちください。 

 観賞の邪魔にならないように、そっとパンフレットを差し出す。

これは、どうも、ありがとう。

 お礼を言われ、ただ、それだけのことに、なんだか心が温かくなる。

 そんなところで一人で座ってるんじゃ、つまらないでしょう?
 
 女性メンバーの一人が、気を遣って言う。

 あはは・・・つまらないと思ったら、私、来ないわ。
 
 つまらないどころか、私は楽しいひとときを過ごしていた。
 普段、一分を惜しんで(と言うのはかなり大げさですが・・)ガリガリと勉強にいそしむ日々を送っているので、何もしないで、ただ、座っているというのは、とんでもなく贅沢な時間なのだ。

 窓ガラスの向こうにそよぐ木々の動きを眺めたり、さんざめく人声を聞きながら、心をぼんやりと泳がせる時間。
 こういう時間を持つことに制約をかけるようになって、随分と時間が経った気がする。
 いい加減、受験勉強にケリをつけたいものだと、つくづく思う。

これ、叔母が作ってきたので、女性の皆さんで分けてもらえれば・・・

 二回り年下彼女とのお揃いペンダントなシルヴァーファンキー親父の手には、手作りの和紙小物と、数羽の折鶴。

 あら、これ、パタパタ鶴じゃない!懐かしい!

 ファンキー親父の叔母様は、小さくて可愛らしい「おばあちゃん」で、幼い日々の記憶に残る祖母の姿を、ふと思い出す。
 そして、その思い出にたぐりよせられるようにして、去年の夏の写真展での出来事が蘇ってくる。

 人生の通りすがりにすれ違っただけの人に、ふと寄せた心を受け取ってもらえなかったとしても、不満を言うべき筋合いではないのだろう。
 だが、人生の通りすがりであっても、その時に触れた心は紛れもなく人の心ではあるはずで、
私は、そういう触れ合いを、ひとつひとつ心の宝箱にしまうような人生を生きたいのだ。

 午後3時、写真展は終了し、撤収作業が始まった。

 最後にみんなで写真撮りますから、ご一緒に。 
 
 今回の写真展の代表者のE氏が、私に言う。

 いえいえ、私は結構ですわ。単なる手伝いですから。
 いえいえ、そんなことおっしゃらず、是非どうぞ。

 
 だが、これまた私の美学に反する。
 通りすがりには通りすがりとしての振る舞い方がある。写真展のメンバーのお一方のお写真を、ブログに使わせてもらっているからといって、自分が写真展を開くかのようなノリで宣伝してみたり、当日だけ、ほんの少しお手伝いしただけの縁でもって、記念写真にニッコリ納まる感性を、私は持ち合わせてはいない。

 これ以上引き止められないうちに、と手早く帰り支度を済ませ、私は洋館を後にした。
 私には私が主人公として振舞っていい世界がある。
 明日からは、また勉強に埋没する日々が始まる。だから、今日持ち帰ったた宝物は、今宵のうちに存分に愛でようではないか。
 パソに向かい推敲を重ねながら、手慰みに鶴をパタパタさせてみる。

 今日という日の思い出は、心の印画紙に刻み付ければ、それでもう、充分だ、と思う。
 

 

というわけで、皆様には、あとからのお知らせとなってしまいましたが、写真展に出品されたstaka氏の作品を、以下、ご紹介いたします。staka氏のご依頼を受け、写真に添える言葉はワタクシがつけさせていただきました。

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暮らし息づく街
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夜風が頬を撫でる
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そして、海
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きらめく光は
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不思議な夜の魔法
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僕らは夜を走り
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僕らは夜に佇む
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ひそやかに
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ひめやかに
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by law_school2006 | 2007-04-02 00:28
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